報告者:ヤンゴン事務所/東京事務所 新石
ミャンマーの中央乾燥地域は年間降水量が少なく、乾期には水不足が生じる地域です。
BAJは1999年から同地域で生活用水供給事業を開始し、深井戸の掘削や修繕、水管理委員会の設置と育成を推進してきました。
2021年の政変以降、長引く衝突の影響により現地住民の経済基盤が損なわれ、村の貯蓄金で深井戸の故障に対応できない事例が増加しています。これに伴い、従来の井戸のロングライフを目指す「開発支援」としての修繕活動は、人々のいのちと暮らしを支える「緊急人道支援」としての役割を担うようになっています。
現在、BAJは今年度の大型の資金調達が不調だったため行政機関である村落開発局(DRD:Department of Rural Development)と正式な覚書(MOU)を締結していません。
しかし、長年の実績と信頼関係を背景に特別に活動許可や協力を得ながら、現地パートナー団体NWSG(National Water Service Group:元BAJスタッフが設立)とともに、中央乾燥地域の村落部の生活インフラ維持に努めています。
さらに、内戦の影響に加えて、エルニーニョ現象等による干ばつリスクが高まっており、自然災害に対する村落の脆弱性が増しています。DRDからの要請に応じ、マグウェ地域での渇水リスクに対する簡潔な対応計画を提出するなど、現地の状況に応じた取り組みを進めています。
本年度のBAJの井戸修繕は、事前に提出した年間計画(10か村)に基づいて実施されますが、現場では不測の事態や、緊急の対応が必要となることが度々あります。

クレーン車で揚水管を釣り上げて交換作業をするNWSG(ニャウチャサン村)
2026年8月、マグウェ郡の幹線道路沿いに位置するニャウチャサン村において、深井戸の故障による給水の停止が発生しました。マグウェ地域大臣からの指示を受けたDRDマグウェ地域局長より、NWSG代表へ緊急の修繕要請が寄せられました。
すでに年内の実施計画と対象村落が確定していたため、既存計画の差し替えはできませんでした。そこで、地域行政や住民との関係を維持しつつ解決を図るため、各主体が資機材や労力を持ち寄る協力枠組み(下記)を構築しました。
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修繕作業が完了し、水量が回復(ニャウチャサン村)
ニャウチャサン村は人口1,280人、270世帯が暮らす村です。村には2本の深井戸(MONOポンプ型およびソーラーシステム型水中ポンプ)があり、今回対象となったのは2019年にDRDの支援で掘削された深井戸(深さ189m、静止水位122m)でした。
停止に伴い、揚水量がゼロになっていた井戸に対し、8月14日に7.5馬力の水中ポンプ交換と孔内洗浄等を実施した結果、毎時1,800ガロン(約6,814リットル)の水量が復旧しました。
こうした緊急要請に柔軟に対応できる体制を維持することは、地域における水供給の担い手として信頼を得るうえで重要な要素です。
臨時要請に対応する一方、年間計画に基づく修繕作業も進めています。
計画10か村のうち、一番最初に着手したのが、マグウェ郡シャーザウンカン村落区にあるウェットー村です。


村の水管理委員会メンバーと故障した深井戸の調査(ウェットー村)
ウェットー村(173世帯、人口657人、家畜570頭)の深井戸(深さ159m、静止水位94m)は、2013年にBAJが建設したものです。建設から13年が経過する中で過去3回の故障を経験していましたが、村の資金制限から安価な部品による応急処置が繰り返されていました。
また、ディーゼルエンジン発電機による駆動を行っていたため、昨今の燃料価格の高騰が維持管理費を圧迫していました。
BAJとNWSGは、2026年8月末頃に、下記の改修作業を完了しました。
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交換したモーターとケーブル(ウェットー村)

井戸孔内洗浄の実施(ウェットー村)
ウェットー村では6名の水管理委員会(VWC:Village Water Committee)が井戸の管理を行なっており、配水パイプラインを通じて世帯へ給水を行なっています(水代:1ユニットあたり1,800チャット)。
電力駆動への変更により月々の燃料負担が軽減されたことで、村は320万チャットの貯蓄金が得られるようになりました。
村の水管理委員会メンバーからは、高品質な耐久性の高い資機材への更新により長期的な維持管理の見通しが立ったことについて、BAJと日本の支援者の皆さまに対して感謝が伝えられています。
現地におけるBAJおよびNWSGの役割は、井戸の物理的な修繕にとどまりません。気候変動による渇水リスクや内戦に伴うインフラ崩壊という課題に対し、現地行政や村落から相談を受ける場面が増えています。

NWSGが所有する2台のクレーン車のうち、上写真の白いクレーン車は、2000年代にBAJが導入した車両であり(30年以上使用!)、地域において水供給活動の象徴として認知されています。
中立的な立場での人道支援実績と、現場での信頼関係により、安全管理に細心の注意を払いながら各村落への訪問と修繕作業を継続しています。
政治的混乱や経済的困窮が続くミャンマーの村落部において、安全な生活用水の確保は喫緊の課題です。皆さまからのご支援により、必要な資機材の手配と現場での修繕活動が可能となっています。あらためて厚く感謝申し上げますとともに、引き続きご支援のほどよろしくお願いします。
●ミャンマー中央乾燥地域の水事業は、外務省NGO連携無償資金協力事業資金(2025年7月まで)と、皆さまからのご支援で行なっています。
皆さまのご支援がミャンマーの村の井戸を支えています。温かなご支援をよろしくおねがいします!
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