報告者:マウンドー事務所 U Zin Min Htike
― ミャンマー・ラカイン州マウンドーで女性たちの学びが再開 ―

8月24日、再開した裁縫訓練の応用コース開講式。
ミャンマー・ラカイン州マウンドーでは、長期化する紛争によって、これまで地域で続けてきたさまざまな活動が中断を余儀なくされました。
BAJマウンドー事務所では、昨年4月にようやく事務所への立ち入りと活動再開に向けた準備が始まりました。しかし、建物や資機材には大きな被害が残り、まずは残された物品の確認や事務所の整理、修繕など、再出発のための作業から取り組む必要がありました。そのなかで、以前から続けてきた女性のための裁縫訓練を、もう一度再開できないかという検討が始まり、実際に動きはじめました。
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■ 10日間で途切れていた「続き」の訓練
BAJはこれまで、マウンドーで女性を対象とした裁縫訓練を長年実施してきました。裁縫技術を身につけて生計向上につなげることに加え、異なる民族や宗教の女性たちが一緒に学び、交流する場をつくることも、この活動の大切な目的でした。
2023年には20人の女性が45日間の基礎コースを修了し、その後、より高度な技術を学ぶアドバンストコースが始まりました。ところが、同年11月にラカイン州で内戦が始まり、アドバンスコースは開始からわずか約10日で中断。20人の訓練生は、残りの訓練を受けられないままとなっていました。
その後、約3年の時間が流れました。
■ 3年ぶりの再会、3人での再開…
2026年、BAJマウンドー事務所では、当時の訓練生たちの現在の状況を確認しました。
長い中断期間の間に、生活環境は大きく変化していました。仕事や生計のために他の地域へ移った人、自分で小さな商売を始めた人、バングラデシュへ難民として非難した人、結婚した人など、以前と同じ条件で訓練に戻ることができる人は限られていました。
確認の結果、再び訓練を受けることができる近隣の元訓練生は、ラカイン人女性2人、ムスリム女性1人の計3人でした。そこでBAJは、関係機関と調整しながら、途中で止まっていた50日間の応用コースを再開することにしました。

約3年の中断を経て残りの応用コースで再開した3人の訓練生。

3人の訓練生が一緒に布を広げ、裁縫の実習に取り組んでいます。
■ 事務所が使えなくても、できる方法を探す
再開にあたって、大きな問題となったのが研修場所です。以前使っていたBAJの研修室は、戦闘の破壊によって大きく損傷しており、現在も訓練に使用できる状態ではありません。そこで、今回は講師の自宅を研修場所として使うことにしました。
屋根にも被害が残っていたため、雨漏りする箇所をビニールシートで応急的に覆い、太陽光パネルとバッテリーを設置。曇天や雨天時には、修理した発電機を予備電源として使用できるようにしました。机や椅子、ホワイトボードなどはBAJ事務所に残っていたものを運びました。ミシンも、すべてを新しく購入するのではなく、以前の訓練で使っていたミシン台を修理して再利用し、必要なミシンのヘッド部分だけを購入しました。限られた資金のなかで、「今あるものをできるだけ生かす」ことで、訓練を再開する環境を整えました。
今回の訓練費用には、これまでの活動で不要となった事務所資産を処分して得られた資金を活用しています。戦禍を経て残った資産が、再びマウンドーの人々のための活動に使われることになりました。

以前の訓練で使用していたミシン台を修理し、再び訓練に活用しました。
■ 現地組織「RAPID」が担い再開した訓練
今回の活動は、現地の市民社会組織「RAPID(Rural Association for Protection and Development)」が実施することになりました。内戦による物価高騰やインフラ崩壊が続く過酷な状況下、現在のマウンドーでは、安全上の理由などからBAJが直接活動を行うことが非常に困難になっています。そのため、活動のローカライズを進めることとし、現地職員が2025年に設立した「RAPID」へ、このマウンドー事業の実働業務を移しました。
今回の訓練も、RAPIDが実務を担う新しい体制のもとで進められています。開講式では、訓練の目的や内容が説明され、訓練生たちには、時間を守って出席し、積極的に学んでほしいとの言葉がかけられました。訓練は無料で受けられるだけでなく、参加者には日当や交通費を支えるための手当も用意されています。
写真に写る3人の訓練生を見ていると、2023年に途中で止まってしまった時間が、ようやく再び動き始めたことを感じます。

講師の説明を聞きながら、裁縫に必要な知識を学ぶ訓練生たち。

久しぶりのミシン作業。3年間のブランクを感じさせないほどすぐに使いこなせるようになっていく。
■ 小さな場所から、自立へ向けた一歩を
紛争によって建物が壊れ、生活環境も大きく変わったマウンドーでは、以前と同じ形で活動を再開することはできません。それでも、残されたものを活用し、地域の人たちと相談しながら、その時々の条件に合った方法を探すことはできます。
今回の訓練は、3人の女性が技術を身につけ、将来の生計につなげるための機会であると同時に、戦争によって途切れてしまった「学び」をもう一度つなぐ取り組みでもあります。そして、現地の仲間たちが自分たちの力で地域を支えていく「自立」への第一歩でもあります。大きな施設も、十分な設備もありません。それでも、一人ひとりが再びミシンに向かうことで、止まっていた活動が少しずつ動き始めています。
今後は、近い将来にRAPIDが独立して自立的な地域支援活動を展開できるよう、BAJは組織的な伴走支援に注力してまいります。
激動のミャンマーで新たな一歩を踏み出す現地の人々へ、皆さまの温かいご支援をよろしくお願いいたします。

訓練で制作した衣服を身につける3人の訓練生。
(翻訳 大野勝弘)
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