報告者:東京事務所 大野
内戦で破壊された無人の事務所に長く放置されていた金庫を、5月に検品できました。中の様子は果たして・・・
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2024年4月末、アラカン軍(AA)の接近によりマウンドー市街の緊張が高まり、BAJ職員は事務所への出勤を停止、多くが市外に避難しました。事務所には資機材や資金などが残されました。
6月、事務所周辺への砲撃で建物が被災し、金庫室も破損。送られてきた写真を見て「金庫が盗まれるのは時間の問題」と感じました。その後、金庫は溶接作業棟に移されたものの安全は確保できず、内戦の混乱の中であきらめるしかありませんでした。8月には市街地で本格的な戦闘が始まり、住民も職員も退避。以降、事務所の状況は不明になりました。
12月、戦闘が終結したマウンドーからようやく得られた情報は、「BAJ敷地内の建物はほぼ全壊、溶接作業棟も崩壊」というものでした。空爆や砲撃で柱や壁が吹き飛び、屋根も落ちていたのです。そんな中、雨ざらしで瓦礫に埋もれた状態ながら、BAJ製の緑の金庫キャビネットが発見されました。横倒しになっていましたが、中に金庫があるはずです。
今年4月、ようやく敷地内への立ち入りが許可され、職員が金庫キャビネットに接近できました。横倒しになっていたのは爆風や盗難によるものではなく、最後までマウンドーに残っていた職員たちが、侵入者に棚と見間違わせるため意図的に横倒しにし、扉を壁側にして部屋の隅に置き、上に機材や工具を乗せて単なる棚に偽装してくれていたのです。
実際、12月以降は門の錠が何度も壊され、敷地からは備品や工具、車の部品まで持ち去られ、繰り返し盗難が発生していたことがわかりました。そんな中で金庫だけが無事だったのは、残留職員MMTさん(略称、以下同)、AMOさん、ZBDさんの判断と工夫によるものでした。
金庫キャビネットには、爆発物や銃撃によってたくさんの穴が開き、水や害虫が入り込んでいた。
爆発物の破片か弾丸によって金庫キャビネットには複数の穴が空き、屋根のない部屋で半年近く雨ざらしとなり、泥と埃にまみれていました。5月13日、安全な場所で内部を確認すると、中の紙幣は水や泥で腐り、虫に喰われて損傷がひどく、ほとんどが使用不能な状態でした。
「これはまだ使える」「これは数えられるけどもう使えない」「これはもう紙くず同然だ…」。職員3人が6日間かけて清掃・仕分けを行い、3,749枚のうち2,533枚を確認できましたが、使用可能だったのは937枚で、額にして全体の約23%にとどまりました。残りは使用不能や札としてすら判別不能な状態でした。
金庫の中には屑になった紙幣の破片が・・・。
金庫内に汚損して残っていた紙幣。慎重に取り出したが、ほとんどは使い物にならなかった。
縁が切れたり、汚れが染みていたりする紙幣も多かった。このような札を受け取るってくれる人はいない。
使えそうな紙幣は、一枚一枚丁寧に布でぬぐい掃除をしたうえで、改めて使用の可否を判断した。
使える紙幣、使えない紙幣を、会計区分ごとに仕分け整理し、改めて保管した。
戦乱で事務所は壊れ、資材や大切な活動資金の多くが失われましたが、私たちは前を向こうと思います。最後まで町に残った職員の工夫のおかげで、わずかとは言え戦禍をくぐり抜けられた現金が、再びこの地の人々の暮らしを支えるための活動再開の「贈り物」になりますように。
6月16日
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