水が不足しているところで水を出す!

水が不足しているところで水を出す  ミャンマー中央部に「Dry Zone=乾燥地域」と呼ばれるところがあります。古いパゴダ(仏塔)が3,000基も立ち並ぶ世界三大仏教遺跡の観光地として有名ですが、遺跡群から少し離れて散在する村々の生活は、昔と変わりません。
 近くには火山で隆起したポッパ山や大きなエヤワディ河が流れています。しかし、この地域一帯では、雨量が年間で500~600ミリ(東京の1/3)と少ないため、村人は、毎日必要な水の確保に追われる厳しい生活にあります。
 普段は、近くにある池の水を生活用水として利用しますが、乾季には池が涸れてしまうため、村人は天秤棒で重さ40キロの水桶を担ぎ、片道3~4キロを歩いて水を運びます。
 BAJは、国内避難民の多いタイ国境のミャンマー南東部でも生活用水供給事業を実施しています。南北2000キロにおよぶこの地域では、雨季には豊富な水も乾季に入ると途絶えてしまうため、水不足に苦労しています。また地質も複雑なために、近くにわき水や川などの水源がある場合はパイプライン、地下水がある場合は掘りぬき井戸やポンプ式の井戸といった、地域にあった水供給を工夫しながら進めています。

村人たちと一緒に

村人たちと一緒に  BAJは2000年から、中央乾燥地域で本格的に井戸を掘る「生活用水供給事業」を開始しました。この地域では、約20年前に国際機関が多くの深井戸を掘りましたが、現在はポンプが破損したり機械の故障などで放棄されたりした井戸が多いのが実態です。c水がある層は地下200~300メートルと深く、井戸を掘ることは容易ではありません。確実に水を得るためには、事前調査(電気探査)と大型の掘削機が必要です。また、エンジンや発電機で動くポンプや、貯水タンクも必要です。
 BAJでは、井戸を掘ってほしいと要請のあった村に行き、村の「水管理委員会 」※1と話し合い、信頼関係を築きながら計画を立てていきます。
 建設作業が始まると、作業をするBAJスタッフの食事や、砂利や砂などの建設資材は、できる範囲で村から提供してもらいます。BAJと村人が共同で井戸建設を進めていくことにより、村人の間では「自分たちの井戸」という意識が高まります。


井戸を上手に使っていくために

 井戸が完成すれば、いよいよ水が利用できますが、その前に決めておかなければならないことがあります。各村では、井戸の維持管理に必要な資金を得るため、水の料金 ※2が決められます。
 BAJでは、村の水管理委員会で選ばれたポンプ担当者に対し、操作や維持管理の方法について技術研修を行います。さらに、井戸を維持管理するのに必要な委員会の運営に関する講習も行います。村によっては、水を売った収益で学校を建てるなど、上手に運営している村もあります。

古い井戸も直して使う

 1980年~86年にかけて、この地域ではユニセフなど国連機関が支援し、60~70か村に深井戸が建設されました。また、この時期には日本政府の援助により、地下水調査や機械修理などが行われ、人材が充実していました。しかし現在は、中堅技術者があまり育成されておらず、全体的な技術水準は低下しています。当時建設された井戸のほとんどは、故障した後、放置されたままです。そこでBAJでは、新たに深井戸を建設するだけでなく、ボアホールカメラ(井戸の中が見られるカメラ)を使ってこうした井戸を調査し、適切な修繕によって井戸を復活しています。

地元の人材を活かす

 井戸を長く使うには、水量の減少や機械類の不具合に細かく対応していくことが必要です。BAJは村のポンプ担当者に対して簡単な技術研修を行っていますが、その中から選抜した12人で、井戸のメンテナンスと簡単な修繕をする作業チーム(ローカルメンテナンスチーム)を作りました。
 2009年以降は彼らがこの地域の安定した水供給を担い、自立して活動をしていく事を目標に、技術のレベルアップに力を入れました。2012年に事務所をチャウパドンからマグウェへ移転した事をきっかけに、チームは独立し、今は中央乾燥地域にて井戸の修繕を中心とした活動を実施しています。

BAJの技術力

井戸を掘る前に

 BAJの調査チームが村を訪問し、村人からの聞き取り調査を行って井戸のニーズを調べます。一方で、水理地質調査や電気探査調査を行って地下水の情報を集めます。また、作業スペースの確保ができるか、あるいは土地の所有権はどうなっているかなどを勘案して、井戸の掘削地点を決めていきます。
 掘削作業では、大量の泥水を循環させながら掘るため、自然粘土と水を用意し、地質の硬さに合わせたビット(掘削のための刃)を準備し、大型井戸掘削機械を村へ移動します。
掘削開始日時は、村の習慣に従います。仏教徒が多いこの地域では、最後にお坊さんが決め、当日は盛大な儀式を行います。


専門的な技術を駆使して

 電気探査や地下水調査で掘削深度を特定し、電気検層で帯水層の位置を確定し、取水するために設置するスクリーンの位置を決めます。掘削孔を広げてケーシングパイプを挿入し、その隙間に細かい砂利を詰めます。次は、クレーンを使って揚水ポンプを井戸孔に下して設置します。揚水ポンプの種類は、地下水の量や村の世帯数を考慮して決めます。
 さらに周辺設備として、貯水と給水の施設の大きさ、建設に必要な資材、人員などを決め、予算を立てます。そして、村のカレンダーにあわせ、村人10~30人の労働力を提供してもらい、建設を進めます。


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活動報告書

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コラム
※1 水管理委員会

村の井戸の維持管理や、水の販売などを管理している村の組合。メンバーは村人の中からボランティアで募っていることが多い。

※2 水の料金

井戸の水をくみ上げるために、ポンプを動かす燃料が必要なため、この地域の井戸水は有料である場合がほとんどである。